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2008-06-09

歴史は繰り返す勿れ




「時事斜断」

                                坂本邦雄

去る15日~16日、ペルーのリマ市でラテンアメリカ及びヨーロッパ共同体諸国の第5回首脳会議が開催され、吾が次期大統領フェルナンド・ルーゴ元司教は、ニカノル・ヅアルテ・フルトス大統領の誘いで、同じ専用機で連立って出掛けた。これ迄にも、ニカノルはルーゴを大統領府に招じ政権引継ぎの打ち合わせを行ったり、ブルビシャ・ローガ官邸では両者家族ぐるみの昼食会を開いたりで、大統領選中の犬猿の争いは何処へやら、お互いに至って和気藹々(わきあいあい)たるものである。そして、ペルーの会議では到着早々ニカノルそっち除けの人気で、初の華々しい国際デビューであった。

最近、あるラジオ聴取者が、何処の放送局とのインタービューで語った事かは一寸失念したが、今回、次期政権を勝ち取った野党連合「改革のための愛国同盟・APC」は、1946年の連立政府と同じ運命を辿るのではないかと  危惧していたのを聞いた。

その意味は次の様な次第である。つまり、幾年も前から居心地が良い大統領の椅子に固執する独裁者イヒニオ・モリニゴ将軍を支えて来たのは、アスンシオンの騎兵隊司令官ビクトリアノ・ベニテス・ベラ大佐、コンセプシオンの騎兵隊司令官エリベルト・フロレンティン大佐、航空隊司令官パブロ・スタグニ大佐と参謀総長ベルナルド・アランダ大佐の所謂「四人組」であった。この実力派グループは別名を「ナチス・ファッショ郎党」とも呼ばれ、実権の手綱を思う侭に操っていた。しかし、1946年6月9日早暁に、C-1及びC-2の両騎兵連隊が呼応して武装決起し、件の問題の「四人組」を駆逐した。この日の朝、パラグアイはお祭り衣装で夜明けを迎えた。市民は歓喜し、「英雄の霊廟」の広場に集まった。

警察隊も今や反対派が唱える新憲法発布、独裁者の辞任や全ての政治運動の自由などを求める声を聞く以外に何ら為す処を知らぬ有様であった。それ迄は青党リベラルや共産党は地下に潜るか又は国外に亡命するしか他に道はなかった。それに比べると、赤党コロラドと二月党は多少は恵まれた形勢にあった。

何時もの常套手段で、モリニゴ大統領は“腕相撲の勝者”に身を委ねた。そして、引き続き牛耳る軍部は 古くからのクレームである民主政体確立の民意に渋々と応じたのである。斯くして赤党コロラド、二月党及び軍部の三者連合で発足した“連立政権”は -実は直ぐに“衝突政権”に変じるのだが-、民主政府の人質としてイヒニオ・モリニゴ将軍を大統領府に据えて“走り出した”のである。そして、新政府の最高意思決定機関に依る施政方針が中々まとまらないにも拘らず、お人好しの国民は自由と希望の福祉国家の未来を夢見たのである。

処が、これまでにも数多くの不幸を招いた原因と同様の理由で又もや国民は幻滅を感じたのである。つまり、内閣や政府主要機関の人事問題を巡って早くも三者連立体制に深いヒビが入り、そして“雷鳴と雷光の共鳴箱”のフタが飛んだのである。要するに、門出して僅か6ヶ月後に連立内閣は崩壊し、その2ヶ月後の3月には例の1947年の大革命が勃発した。この約7ヶ月も続いた内乱は全国を喪で満たした。

但し、野党連合「改革のための愛国同盟・APC」の次期ルーゴ政権が、46年のモリニゴ連立政権の轍を必ずしも踏むとは思えない。今は60余年前の世相傾向や社会事情とは異なった時代である。「ルーゴ丸」を沈没させない主な責任は偏に多数派の青党リベラルにある。多様な野党連合の皆をルーゴが満足させるのは容易な事では なかろう。もし、青党が多数派の勢いに物を言わせて、新政府の魅力的な多くの要衝ポストを席捲すれば他の同盟党派の不満を招くであろう。近い中に国民は、新政府は信念を以って政府機構改造に目を付けていたのか、又は単に内閣の人事争い、或いはアブク銭の取合いに憂身をやつすに過ぎなかったのか、実際の正体を暴く事が出来るであろう。

我々は次期政権の賢明なる当局者の良識と愛国心に期待したい。万が一そうでなければ、嘗て1946年の “苦いデモクラシーの春”と同じ様な結末になるのを恐れる人達の心配は矢張り本当だったのかと、後悔はしたく無いものである。即ち、昔の連立政権の失敗の例を、改めて21世紀の今日、また繰返す愚を今更冒すのであれば、パラグアイは世界からどうにも救いの手が無い国だと云われても仕方はありますまい。





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theme : パラグアイ
genre : 海外情報

tag : フェルナンド・ルーゴ 政治 パラグアイ 2008年5月31日号

2008-05-15

次期政権の挑戦




「時事斜断」
                                    坂本邦雄


今回、次期大統領に当選したフェルナンド・ルーゴ元司教の人気は中々なもので、朝野を問わず各界の色んな人達の“ルーゴ参り”は、毎日引きも切らぬ“盛況振り”である。これは、国政改革を切望する多くの市民が如何に新政権に対して大きな期待を寄せているかを示すもので、5年前のニカノル・ヅアルテ・フルトス現大統領の就任時の比でない。なお、パラグアイが国際ニュースで今回ほど大きく取り上げられたのも初めての事である。それだけに、ルーゴ次期大統領の責任は重い訳で、一方これ迄に選挙公約が嘗て守られた試しがない事を思うと可なり疑問にもなる。

処で、新内閣の組閣人事の問題は、フェデリコ・フランコ次期副大統領を出した党派連合(改革のための愛国同盟・APC)中で主導的地位を占める青党リベラルの圧力があってか、予想外に手間取っていて、最近漸くニカノル政権の初代蔵相ディオニシオ・ボルダ氏が新政府の大蔵大臣に任命予定の公表が初めてあったのに続き、次期国防大臣にルイス・バレイロ・スパイニ退役砲兵大将の名が挙がった。ニカノル政権では軍人が国防相になった事は一度もなかった。その他の閣僚では、マルチン・ヘイセケ(商工相)、アニバル・カリリョ・イラマイン(厚生福祉相)等の名前が色々噂されているが、現時点(5月9日)では未だ公式な発表はない次第である。なお、特に外務と内務両大臣には誰が任命されるかゞ大きな関心事である。

当のルーゴ元司教は、閣僚や高級官吏の人選は超党主義に徹し、所属党派の如何に拘(こだわ)らず唯一学識能力と誠実性を絶対条件とし、適材適所の人事発令を行う事を固く約している。そして、この 大統領の人事権は誰しもが代行は許されない権限であると言明している。

因(ちな)みに、「現下の政治動向と今後の成り行きの考察」と題し、社会・政治学者ミルダ・リバローラ 女史が、先日ピラール市の国立総合大学分校に於いて講演した要旨を見ると、次期政権が挑戦しなければならない課題の一つは、進歩主義のルーゴ改進大統領が中道右派主導の国会過半数のプレッシャーを如何に捌(さば)き切れるかに懸かっている。成否の全ては、ルーゴ大統領のリーダーシップと左派政党及び 社会の支援如何の次第に依る。

今や更なる参加政治と危機の黎明期を正に同時に迎えたのである。パラグアイの社会問題は労働組合、低調な工業化又は過疎な企業シンジケートが原因ではない。吾が国の有給労働人口数は 最小である。重大な難点の中には、地方住民や潜在失業者の深刻な問題がある。依って、「雇用の創出と貧困削減対策は新政府がチャレンジす可き焦眉の大課題」である。

然し、他方パラグアイは現在明らかな経済成長期にあり、有利な状況なのも事実で、ニカノル・ヅアルテ・フルトス大統領が就任した際に受け継いだ、“債務不履行(デフォルト)”の経済状態とは異なる国情下にある。

疑問は、ルーゴ政権が如何にシンジケート、牧畜協会・ARP、経団連・FEPRINCO、工業協会・UIPや其の他政界と根強く癒着するグループ等、重要産業部門や政治力のある利害勢力の圧力に屈せず、如何に国益を優先させた統治力を発揮し得るかである。

“ルーゴは神父で、誰との紛争も望まない穏やかな人物である。融和を旨とするも、凡そ社会組織の乱れは欲しない筈である。パラグアイで司教や聖職者が善政の実践躬行(じっせんきゅうこう)に果たして寄与出来るかは、今後の見物である”と、ミルダ・リバローラ女史は語った。





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tag : 2008年5月15日号 次期政権

2008-04-15

信徒を二分するルーゴ元司教の大統領立候補




時事斜断
                      坂本邦雄


いよいよ次期大統領選レースが一直線の最終コースに入り、
来る20日の決勝線を目指して各候補者は力走している。

さて、誰が一番にゴールインするかゞ大いに見物(みもの)だが、
これ迄にも随分嬲(なぶ)られ、色々と疑問視もされて来た
世論アンケートや科学的調査資料ではあるにしても、
冷静に且つ公平に政治分析すると、次期大統領に何れの候補者が
最後に決まるか或る程度判断の参考になるのである。

要するに、各候補者の人気の競合差は僅少と云える処、
浮動票が未だ凡そ11パーセント弱もあり、此れを最終段階で
正に如何に其の多くを捕え込むかに依って

各候補者の勝敗が決するであろう。目下の形勢は、
1-ルーゴ元司教、2-ブランカ女史、3-オビエド旧将軍
及び遥に落ちて、4-愛国党のファヅール党首と云う
人気順位であるが、最近は2のブランカ女史が赤党の底力を
発揮して、1のルーゴ司教を大いに追い上げていて、
20日の全国総選挙戦は主にこの両者同士の大接戦になりそうである。

処で、一見最も人気があるフェルナンド・ルーゴ元司教について
考察すると、カトリック教国 パラグアイの信徒、
即ち大部分の国民をルーゴ元司教は大きく二分しているのである。

つまり、ルーゴ元司教の政界入りは明らかに公教法に背いた
行為であり、ローマ法王庁及びパラグアイ司教協議会は 
此れ迄にも幾度も注意して来た。更にルーゴ元司教は翻意を促す
法王ベネディクト16世の懇切な訓戒も聞き入れなかった為に
停職を命じられた。此れは反逆であり、神に終生の忠誠を
一度(ひとたび)誓った聖職者の重罪である。
国法的に解釈しても、ローマ法王庁に完全退職が認められていない
聖職者は依然として 現職に存続するものと解釈され、
従ってこのような身分に於いて大統領又は副大統領に
立候補する事は違憲なのである。

なお、ルーゴ元司教が世論で不利なのは、近来台頭している
ベネズエラの強硬左派 指導者ウーゴ・チャベス大統領に迎合し、
且つコロンビア革命軍(FARC)との関係が疑われている事で、
多くのパラグアイ国民の思潮と相容れないものが隠然として
底流にあるからで、中々微妙な面がありルーゴも苦しい処である。

一方、ルーゴ元司教の支持者は、60有余年政権を牛耳って来た
赤党特権グループの悪政で、国民の33%が極貧に喘ぎ、
多数の者が外国へ出稼ぎに逃れ家族は分散し、
国土の凡そ半分は外国人の所有に帰している等、
過去に見られない重大なジレンマに此のパラグアイを
陥(おちい)らしめた、
腐敗した赤党を今度こそは野に下し、
抜本的な行政改革を以って救えるのはルーゴ元司教以外にはなく、
苟(いやしく)も憂国の士なれば当然ルーゴに
投票す可きであると力説するのである。

先日、国会でもルーゴ元司教を推す青党リベラルの
ベラ・ベハラノ参議員は、ルーゴはマフィア(暴力団)、
麻薬闇取引、密輸団、悪徳業者、多国籍企業等が君臨する
パラグアイの世直しに神が遣わした使者であると発言し、
毒舌をもって知られる赤党コロラドのカレー・ガラベルナ参議員に
猛烈に捲(ま)くし立てられた。

一方、あからさまにルーゴの立候補に反対を唱えられない
カトリック教会は、ある例外を除き大多数の司教は信徒団に対し、
来る20日の総選挙には成可く多くの有権者が国民の
義務である投票に参加し、各自の良心に従って自主的に
清き一票を投じる様に勧告するに止まっているのである。

なお、最近の珍しいイベントとしては去る3日の
夜21:00時より1時間に亘り、
パラグアイ日本・人造りセンター(芭日文化センター・CPJ)内
の劇場に於いて、アメリカのCNNテレビ及びパラグアイの
SNTチャンネル9・セロコラの共催で、目下選挙運動で
凌ぎを削っている主要次期大統領候補4者の
公開政治討論会が行われ、世界3.500万人の視聴者に向けて
生中継で放映された。

筆者は此の番組を見て感じたのは、主演者ブランカ、ルーゴ、
オビエド及びファヅール各氏の政治所信表明は夫々の持味はあるが、
大同小異此れ迄に何度も聞かされて来た処と余り代わり栄えしない
退屈なもので、何れの候補者が大統領に当選した処で、
その公約が何の程度果たせるのだろうかと勘繰る位が落ちであった。

話は別だが、一寸特記したいのはパラグアイで初めて
世界に向けて国際CNNテレビに依り放映された
此の生番組の舞台に、パラグアイの人達は
“セントロ・パラグアジョ-ハポネス・CPJ”
と親しんで呼んでいる、「パラグアイ日本人造りセンター」の
劇場が選ばれた事である。

この誠に有意義な多目的 センターは、
パラグアイ日本人移住50周年記念行事の一環として、
日本政府の16億円に及ぶ無償援助で1986年に、
当国を親しく御訪問された常陸宮殿下、華子妃殿下御臨席の
もとに定礎式が行われ、1988年に無事完成し
アスンシオン市役所に移管されたものだが、
其のギリシア風建築の優美な容姿と 完備された
装備・施設は我々在留日系人が一様に誇りとする処である。

当テレビ番組の司会者は、収容力600人の
劇場をほぼ埋めた特別招待客を前にして、討論会の舞台を
“セントロ・パラグアジョーハポネス”と
盛んに紹介したのである。
日本政府も実に良い贈物をしたものだと思うが、
「パラグアイ・日本人造りセンター」は、
CNNテレビのお陰で世界に広く知られる事になったと
云えば過言であろうか。

僅か5日後に迫る此の日曜日は、
愈々“民主主義の基本である大統領総選挙”の「D-デイ」である。

さて、国民の期待に応え得る理想の次期大統領に
何れの候補者が選ばれるかであるが、最も大きな課題は
現政治機構の改造である。

此れについて各候補者は、我こそは其の旗印であると自負し、 
お互いに譲らない。

只今の処、人気投票ではトップにあるルーゴ元司教は、
野党反対勢力10何数派のバックを得ているが其の基盤は
案外脆い欠点がある。
即ち、ルーゴ自身は左派に片足を賭け、
もう一方の足は 自由思想の青党に賭けている矛盾があり、
無理な体制である。

片や世論調査では多少劣勢なブランカ女史は、
パラグアイ有史以来初(はつ)の女性大統領に選出される事で
赤党は自浄能力を発揮し、単なる
惰性的な赤党新旧政権の交代ではなく、
抜本的な行政機構改革を成し遂げる自信を示している。

予想では結局、ルーゴ元司教とブランカ・オベラル女史の
決戦になりそうだが、未だ可成りある浮動票や
オビエド派又はファヅール派の票田が如何に動くかも
興味深い処である。

駄々を捏ねていた ルイス・カスティグリオニ前副大統領も、
最近になって漸く自派「前衛運動・Vanguardia」は
ブランカ女史に全面的に協力する事を宣言した。

因みに、当のニカノル・ヅアルテ・フルトス大統領は、
赤党主流派が擁立したブランカ・オベラル女史の
次期大統領当選を絶対に確信しており、
今回主要政党候補者の公開政治討論会の生番組の
中継放映に来パした、CNNテレビのカルロス・モンテロ司会者と
会見した席上で、“貴CNNテレビは総選挙の翌21日には
ブランカ候補が、吾が国で初めての女性大統領に選ばれた
ニュースを大きく報道する事になろうと断言した。      




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tag : 2008年4月15日号 政治 大統領選 フェルナンド・ルーゴ パラグアイ

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