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2008-04-30

回天の四月二十日




「時事斜断」
                  坂本邦雄

好天気に恵まれた去る20日(日)に、予定通り
全国総選挙戦が早朝07:00時より始まり、
約280万人の有権者中の64.3%が投票に参加した。

これは今迄にない多数の参加率で、16:00時の締切り後、
各管区投票所から逐一報告されて来る票読み数が
選挙管理委員会(中央選管)のテレビ・スクリーンに
次々と大きく映し出され、21:30時には開票率92%の時点で、
当日の大統領選の大勢が 早くも決まった。 

結果は予想されていた通り、野党連合(変革のための愛国同盟・APC)の
中道左派ルーゴ元司教が得票率41.82%で主要対抗者の
与党コロラド中道右派ブランカ・オベラル前教育文化相(30.72%)を
約10%の大差で破った。

なお、倫理市民連合・UNACEのリノ・オビエド旧将軍は
21.98% 及び愛国党・PQのペドロ・ファズール党首は
2.37%の各得票率に終わった。

ルーゴ元司教は、
「此の度パラグアイは新たな政治時代を迎えた」と、
勝利を宣言した。

ブランカ、オビエド、ファヅールの各候補者も夫々の敗北を
潔く認め、次期大統領に協力を約した。
今回の総選挙は全国に亘り、種々危惧された様な各党派有権者間の
衝突や暴力行為も余り起こらず、平穏無事に終了した。

米州機構・OASより派遣された選挙監視ミッション団長の
コロンビア国前外相マリア・エンマ・メヒア女史及び
同じくコロンビアの前大統領で、
IFES・国際選挙システム財団(NGO)の
ミッション団長アンドレス・パストラナ氏も異口同音に、
整然とした選挙組織や有権者の正しい投票態度等を高く評価し、
パラグアイの民主政体が成熟しつゝある証として賞賛した。

赤党コロラドは予想外の敗北を喫し大きなショックであり、
綿々として61年間も制覇し続けた政権の座を野党に
渡す始末となった。

その主な原因は、悪政化の増進が止まざる長期赤党政権に
これ以上耐え切れず、愛想を尽かした多くの
草臥(くたび)れた国民が、今度は何としても改進的な
政治政体を求めた微妙な志向心理に対しコロラド党は
敏感性に乏しく、加えて党内反主流カスティグリオニ派の
30万票とも云われる票田が、ルーゴ派に流れた事に
あったと見られている。

処で、此の野党連合の快勝の裏読みをすると、
ルーゴ次期大統領のペアたるフェデリコ・フランコ副大統領を
出した青党リベラルが実際の大勝者なのであり、
中道左派ルーゴ新政府の要職の大部分は自由派青党が
占める結果になるであろう。

この辺りから、所謂「変革のための愛国同盟」の
“箍(たが)が緩み出す”恐れがあるとは、
多くの識者の共通した意見である。
何れにせよ、2008年4月20日の 総選挙結果は、
パラグアイ政治史に「回天の日」として
大きく残る“道標”となろう。

此処で簡単にフェルナンド・ルーゴ元司教の経歴を記すと、
元々同氏は赤党家系の出身で、
故ストロエスネル大統領の
大政敵エピファニオ・メンデス・フレイタス
(超俗のエッセイスト、作詞家、詩人、ジャーナリスト
として知られ、警視総監や中銀総裁等を勤めた偉才で、
1985年に亡命先のアルゼンチン、ブエノスアイレス市で客死)
の母方の甥に当たる。
司教の聖職に在り乍ら政界に身を投じ、
バチカンの特免が許されない侭で次期大統領選に立起した。

そして、今回当選した事から、事態収拾の為に
法王ベネディクト16世は未だ停職の身分にあるルーゴ司教を
ローマに召致し、バチカン市国とパラグアイ政府との
将来の国交問題についても話し合う予定であると云われる。

兎も角、停職司教が一共和国の大統領に選出されたのは
世界でも初めてのケースである。
確かに聖職者が他の国で為政者に選ばれた例はあるが、
カトリック司教が大統領になるのは前代未聞である。

同じく、投票に依り二人の兄弟が夫々副大統領職に就くのも
初めての例である。詰まり、2000年に暗殺された
ルイス・M・アルガニャ副大統領の後任に公選された
ジョジト・フランコ元副大統領と、
今回は其の8年後に弟のフェデリコ・フランコが
副大統領に当選したケースである。

なお、パラグアイ国 有史以来、落選はしたものゝ
女性(ブランカ・オベラル女史)が赤党から大統領選に
出馬したのも初めての事である。

又、赤党コロラドが主権在民の総選挙に依って下野した事も、
パラグアイ政治史上で初めてゞある。
過去20年間の政治過渡期に於いて、
連続5回に及ぶ全国総選挙が正常に且つ民主的に
行われて来たのも特記す可き慶事である。

以前は長らく、吾が政治の特色は相次ぐクーデターや革命 
又は理由不可解な大統領の辞任に依る政変ばかりであった。
故にこの度は、民主主義の基本である総選挙の結果、
来る8月15日に与党から野党へ初めての
政権交代が平穏裡に果たされる事は正にこれ迄に見られなかった
ユニークな国事イベントと解釈できるのである。

参考迄に記すと、フェルナンド・ルーゴは47代目の
大統領に就任する初めての聖職出身者である。
1844年に立憲政治が布かれて以来、各種職業出身の
大統領が相次いだ。

主に軍人と弁護士が夫々15人で相半ばした。
フェリーペ・モラス・ロペス大統領(38代目)は
唯一の歯科医だった。
医者では、フアン・ヒール(5代目)及び
ホセ・モンテロ(26代目)の両大統領で、
トマス・ロメロ・ペレイラ大統領(40代目)は建築技師だった。

なお、近代ではフアン・C・ワスモシ(43代目)と
ラウル・クバス(44代目)の両大統領は土木技師で、
最近のニカノル・ヅアルテ・フルトス大統領(46代目)は
ジャーナリスト出身である。

其れにマヌエル・ゴンドラ(20代目)及び
エヅアルド・スチェール(24代目)両大統領も
ジャーナリストだった。

アルフレド・ストロエスネル大統領(41代目)は軍人で、
35年間の長期独裁政権を牛耳ったレコードホルダーである。

なお、独身大統領は28代目のDr.エリヒオ・J・アジャーラと
今度の47代目大統領フェルナンド・ルーゴ元司教の二人である。
勿論ファーストレディはない。 




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tag : 2008年4月30日号 大統領選挙結果 パラグアイ フェルナンド・ルーゴ 政治

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