年頭の言葉 2009年 1月 新年特別号
「迫り来る大激変」
日系ジャーナル
主筆・ミチオ 高倉
明けましておめでとうございます。
輝かしい新年を寿ぎたいところだが、何やら「大恐慌」の足音が聞こえてくる。
錦の御旗たるグローバリズムを掲げ一国覇権主義で傍若無人に振る舞ってきた米国の影響力が失墜してきた。
大恐慌といえば、過去、ニューディール政策から第―、第二次世界大戦という歴史の繰り返しで、再び、米国が戦争への誘惑にかられる恐れがある。
昨今のイスラエルの強引なガザでの戦火拡大。さらにアメリカ等がアフガニスタンへの集中砲火、イランへの攻撃等に踏み込めば、中東での「紛争」が大戦争となり、世界経済が大混乱に陥るのは不可避であろう。
サンペドロに革命の拠点?
ルーゴ大統領が昨年8月、就任して以来、土地なし農民たちの不法侵入問題が全国的に増えてきたようだ。ルーゴ大統領は元カトリックの司教としてパラグアイの貧困地帯サンペドロで長年、貧農問題に取り組んできた。また同大統領は、カトリックの解放の神学(社会正義、貧困、人権などにおいて時に武力闘争をも辞さない傾向を持ちマルクス主義から階級闘争を煽る)の信奉者としても知られている。
そのルーゴ大統領の就任式にベネズエラのチャベス大統領が訪れ、ともに仲睦まじくサンペドロ県に行き何やら密約を交わしたのではないか、と現地マスコミが問題視してきた。そのサンペドロで昨今、軍隊の武器保管庫が20数名もの武装集団に襲われ武器を奪われるという前代未聞の大事件が発生したことからチャベスの影響力が、その背後にあるのではないか?と推測されている。
チャベスが目指す社会主義とは?
米国のブッシュ大統領をあからさまに「悪魔」と呼ぶチャベス大統領は、「反グローバル化」運動との連携を強めてきたこともあり、新しい社会主義モデルを模索している。
彼はまず、ラテンアメリカ域内では、米主導の米州自由貿易地域(FTAA)に対抗するための「米州ボリーバル主義代替政策(ALBA)」を提案した。このALBA戦略の枠内で、キューバとの連携による識字運動、石油共同開発を目指した「ペトロスル」の設立。欧米のフィルターによる巨大メディアに対抗する南米版CNNとも言うべきテレビ局「テレスル(Telesur)」の設立などが行なわれている。そして、南米一二ヶ国が参加する「南米諸国連合(旧名=共同体)」も発足。そして、ベネズエラはメルコスールにも正式加盟し、その影響力を強めている。2007年1月8日、チャベス大統領は、ベネズエラの21世紀の社会主義の確立に向けてより具体的な新政策を公表した。この中で注目されるのは、基幹産業の再国営化である。演説でチャベスは、「私達は今、新しい時代、2007年から2021年のシモン・ボリバル国家計画に、入った」この計画が向かうのは、「ボリバル主義的社会主義であり、革命的な特質を要する」とチャベスは述べた。
さらに目を引くのは「ボリバル主義の大衆教育」の新たな運動として「新しい価値観を深め、個人主義、資本主義、利己主義という古い価値観を打破する」とチャベスは述べている。彼の目指すものが原理主義的社会主義革命だ、とするなら大きな闘争と犠牲が払われるのは避けられない。
この様にチャベスの目指すボリバル革命を見ると、何となくルーゴ大統領のパラグアイ改革の一端が透けて見える。
因に社会主義という概念を簡単に説明すると工場、農地等の「生産手段」を国が管理し計画経済を行うというのが社会主義で個人財産を認めない社会体制。旧ソ連、中国、北朝鮮などがそれに該当する。
階級闘争には外国人排斥運動も含まれる
革命にはその相手とする敵が必要だ。そこで階級闘争が煽られる。その同系列に外国人も標的に上がる。
この国のリーダーがチャベス大統領に深く共鳴しているとするなら我々移住者も、日本政府も覚悟を決めてその戦略を練らねばなるまい。2004年新年号の当欄にも警鐘を鳴らしたことだが、まず、日本人コロニアを死守しなければならない。
それは、チャコ地方に入植したドイツ系メノニータたちが当地の先住民インディオたちに仕事を与えたり、学校や病院を作ったり、といった生活支援をしていく事でうまく共存している、というあの共存体制を周辺貧農グループとの関係で確立することだろう。
つまり、周辺パラグアイ人の生活をレベルアップし日系コロニアへの羨望、反感の牙を抜くことに当面、努力しなければならない。
そのためにはJBICの海外経済協力部門を担い、世界最大規模の援助機関となった新JICAの手腕が問われることになる。左傾化が進む南米でこのパラグアイもルーゴ政権が昨年誕生した。トップリーダーがその進路をあいまいにしているものの当国も左傾化へと進路を切り始めたと思われる。今こそ新JICAは、その資力、ノウハウを日系コロニア防衛のためのプロジェクトに知恵を絞らねばならない。
勿論、ODAプロジェクトはあくまでこの国の住民を豊かにレベルアップすることが肝要だ。そのためには日本語もスペイン語、グアラニー語も自在にしゃべれる二世たちを如何にこのプロジェクトに活用するかが重要だ。ただ、その場合もあくまでこれらのプロジェクトは地方政府や企画庁、農牧省など中央官庁に十分根回しして彼らサイドからの立案、と言う形にしなければならない。これまでの日系社会はこの手のやりかたが不得手だった。これからはパラグアイ政府との折衝要員、つまり、ロビー活動が出来る有能な二世三世を早急に育成する必要がある。
遠慮深い日本政府はともすればガチンコ交渉を避け、日本近海の資源や領土問題にさえ腰を引いてきた。
しかし、過去数十年にわたり当国に莫大な投資をしてきた日本政府及び日系移住者の基盤が脅かされるようなことがあれば、その損失は計り知れない。
平成21年 元旦
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休憩室ー2009年新年号
ジャスミンの香りが強く香る…。
雨が近いのだろうか?
明けましておめでとうございます。
最近、大きな果実のマンゴを路店やスーパー等で見かけるようになった。このマンゴ、カロチン類、ビタミンB/C、フラボノイドなどが含まれ、肌にとても良いそうだ。
アスンシオンの街路にたわわに実ったマンゴが路上に落ちており、芳香を放っている。豊かな実りに心も和むが、昨年来の米国発の金融恐慌の流れがさらに加速しそうな年明けとなった。あれほど高騰した原油も今や暴落している。
これはアメリカが金融界と組んで大産油国で反米国家であるロシア、イラン、ベネズェラ等の国家財政を破綻させる戦略だそうだ。
ま、いくらアメリカがジタバタしても米帝国凋落の流れは止められない。
世界経済にとって不気味なのは中東情勢だ。イスラエルは空爆から地上戦に突入したがハマスも徹底抗戦の構えを緩めない。まるでハルマゲドン(最終戦争)到来を呼び寄せるかの様相を呈してきた。
気になるといえばこの国のあり方も何やらキナ臭い状況になってきた。
“治にあって乱を忘れず”の心境で呉々も準備怠りなくありたい。
今年も幸多かれ!と柏手を打って祈念したが、お正月、神棚に供える鏡餅は本来、豊穣の神である蛇を迎え入れる為にとぐろを巻いた姿を擬したものだ。
時代錯誤の社会主義革命と揶揄されるベネズエラのチャベス大統領は尊敬する革命家シモン・ボリバルの名前を「ベネズエラ・ボリバル共和国」と国名にまで挿入している。現在のベネズエラ、コロンビア、パナマ、エクアドルを合わせた大コロンビア共和国初代大統領となったそのボリバルは、ラテンアメリカ統合の夢がむなしく破れた晩年「歴史上最大の馬鹿者はイエス・キリストとドン・キホーテと私だ」と語った…。確かにアメリカはやり過ぎた、といって今更、社会主義はないだろう。
当国日系社会の守護神として日本古来の神々の招来を祈念しよう。
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