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2008-12-31

「12月8日」




  「時事斜断」                               坂本 邦雄

 何んとも年毎(としごと)に速くなる感じの年の瀬で、今年も既に師走(しわす)である。毎年私は此の頃になると思い出すのは幼年時代にラ・コルメナ移住地で迎えた1941年12月7日の事である。当日は日曜日だったがコロニア市街地のパラグアイ人の多くは翌8日のカアクペの聖母マリア祭で巡礼に出掛けていた。ラ・コルメナの開拓が始まって僅か5年目の事で、当然、未だ交通やラジオ・ニュースの便も悪かった僻地の移住地が賑やかである筈はないが、気のせいか其の日は何時よりも静かだった様に記憶する。

 祖国日本の当時の情勢と言えば大陸では満州事変から日支事変へと拡大し、更に日独伊三国枢軸同盟条約が結ばれ、且つ日本は国際連盟を脱退する等で米英を中心とする世界各国との関係は極めて悪化する一途を辿っていた。其の様な時に大日本帝国海軍は12月8日未明(現地時間7日午前)を期してハワイのパール・ハーバーの母港に停泊中のアメリカ海軍太平洋艦隊に果敢な航空奇襲攻撃を加えて大戦果を挙げたのである。此のニュースを伝えた軍艦マーチ入りの大本営発表を傍受したのは、其の頃コロニアで唯一の短波ラジオを持っておられた故田中秀穂ドクターで、同氏の書き写した回覧速報を見て移住地の人達は戦勝気分で沸きかえった。

 然し、何時かは起こる可くして起きた日米開戦だと皆は覚悟はしていたものゝ、此れで祖国日本との交信や支援は途絶し、コロニアは孤立状態に置かれた現実に立たされた時の不安感は誰しもが否めない処であった。そして、ラ・コルメナの人達で未だ覚えておられる方もあるかと思うが、其の日の夜空を見ると東南に尾の長い大きな箒星がかかったのである。時期的には公転周期は約75年と云われる彼の有名なハレー彗星には当たらないので、幾多ある他の箒星(ほうきぼし)の一つではなかったかと思われたが、其の名も解らない侭で三日程したら消えた。物知りの母親が此れを見て、「昔からほうき星が現れると余り良い事はなく不吉だと言われるが、陛下(昭和天皇)も厄年に当たられ、日本も今度の戦争は大変だねぇー」、と話した。私の義父(酒井)も同じ厄年だったのである。

 余談はさて置き、本題の12月8日の(私の記憶には7日の真珠湾攻撃と二重写しになる)カアクペの聖母マリア祭の話であるが、今年は例年になく多くの巡礼参拝者が集まり、ルーゴ大統領、フランコ副大統領及び其の他閣僚や国会議長等々政府要人が大勢出席した。此れも近来無かった事で、ニカノル・ヅアルテ・フルトス前大統領はカトリック教徒でなかった事もあって、任期中一度もカアクペの聖母マリア祭に参列しなかった。現行憲法は信教の自由を認め、此れ迄の様にカトリック教を国教とせず、政教分離主義を定めているので、政府三権の首長がカトリック教恒例の祭礼毎に参列が義務付けられている訳ではない。なお、教会側も特に招待はせず任意出席を促すに止まっているのである。

 処で、此のカアクペの毎年の聖母マリア祭に参集する巡礼参拝者の数は、国民の色んな悩みの度合いを示すバロメーターで、国の政情を良く反映するものだと云われる。詰まり、今回のカアクペのマリア祭に何時になく多くの人達が全国から集まったのは期待外れの現政府に市民は不安を感じている現象だと云う訳である。なお、当日朝の本番ミサの礼拝式を主宰したカアクペ教区のクラウディオ・ヒメネス司祭は、其の法話の中で現政府の社会政策は必ずしも至当とは云えず、地方各地其の他で無産階級の暴動や犯罪がエスカレートしている現状はキリスト教理では禁じられている階級闘争を無責任なリーダー連が煽っている結果であると強く非難し、ミサに参列していたルーゴ大統領には耳の痛い訓戒であった。けれども、此の頃は大分“面の皮”が厚くなったルーゴには“蛙の顔にションベン”の喩えで、何処まで此の説教がインパクトしたかは怪しいものである。

 然し、何故此れ程にカアクペの聖母マリアが信心されるかと云うのは、正に霊験あらたかな故に依るのであって、大勢の信者は人生の悩みを訴えて様々な願を賭けるのである。此れを一々聞いて祈祷者の望みを夫々捌くのは大変な分量の仕事で、此処は聖母マリア様も近代文明の利器コンピューターでも導入して処理に当たらなければ追い着かないのではと...、此れは要らぬ余計な心配ですかな?。

 此のカアクペのマリア大祭は12月8日の後も更にオクタバリオ週間祭が続くが、15日(月)の最終 ミサの礼拝式を主宰したベネディクト16世ローマ法王使節(大使)オルランド・アントニニ司教は其の法話の中で、ルーゴ政権が万が一失敗に終わった際のバチカン法王庁の公式立場を明らかにした。其れは、つまり、概要説明すると、要するにカトリック教会は最初からフェルナンド・ルーゴ元司教の大統領立候補に反対していた。然し、パラグアイの市民は其の理由を良く熟考しない侭、単に与野党間の政権交代を夢見て現行の選挙法に基づきルーゴ元司教を大統領に選んでしまった。其れが正解であったか又は失敗であったかの結果は、今後は唯一、有権者の責任に懸かっている。但し、カトリック教会は政治に関与するものではなく、純宗門的立場に立って述べている事であるが、ルーゴ大統領は教会に対し幾多の問題を起こした罪のプレッシャー(呵責)以外に“国民に公約した善政を果たす可き重責を義務付けられている”、と云うものである。

 そして、カトリック教会は過去に於いて政治に関わる歴史的な苦い経験を味わった事もあり、パラグアイの“ルーゴ現象”に異議があった様に、今後共世界の何処に於いても此の種ケースに反対し続けるであろうと明言した。因みに、バチカン市國の国際的影響力は侮れないものがあり、例えば近い所では隣国アルゼンチンで嘗てのペロン政権が失脚したのもカトリック教会との摩擦が遠因になった事は歴史に明らかである。

 なお、オルランド・アントニニ司教は先の全国大統領総選挙戦に打って出たフェルナンド・ルーゴ元司教が案外な善戦を続けるのを見て、斯くの如き“ルーゴ現象”が起こるのは従来の政治家連が“ダラシナイ”からだと痛烈に批判したが、確かに下野に追い込まれた赤党コロラドは今更泣き言を云っても始まらないのである。





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