2009-01-15

年頭の言葉 2009年 1月 新年特別号




  「迫り来る大激変」

                                     日系ジャーナル 
                                     主筆・ミチオ 高倉



 明けましておめでとうございます。

 輝かしい新年を寿ぎたいところだが、何やら「大恐慌」の足音が聞こえてくる。
錦の御旗たるグローバリズムを掲げ一国覇権主義で傍若無人に振る舞ってきた米国の影響力が失墜してきた。

 大恐慌といえば、過去、ニューディール政策から第―、第二次世界大戦という歴史の繰り返しで、再び、米国が戦争への誘惑にかられる恐れがある。

 昨今のイスラエルの強引なガザでの戦火拡大。さらにアメリカ等がアフガニスタンへの集中砲火、イランへの攻撃等に踏み込めば、中東での「紛争」が大戦争となり、世界経済が大混乱に陥るのは不可避であろう。


サンペドロに革命の拠点? 
 ルーゴ大統領が昨年8月、就任して以来、土地なし農民たちの不法侵入問題が全国的に増えてきたようだ。ルーゴ大統領は元カトリックの司教としてパラグアイの貧困地帯サンペドロで長年、貧農問題に取り組んできた。また同大統領は、カトリックの解放の神学(社会正義、貧困、人権などにおいて時に武力闘争をも辞さない傾向を持ちマルクス主義から階級闘争を煽る)の信奉者としても知られている。
 
 そのルーゴ大統領の就任式にベネズエラのチャベス大統領が訪れ、ともに仲睦まじくサンペドロ県に行き何やら密約を交わしたのではないか、と現地マスコミが問題視してきた。そのサンペドロで昨今、軍隊の武器保管庫が20数名もの武装集団に襲われ武器を奪われるという前代未聞の大事件が発生したことからチャベスの影響力が、その背後にあるのではないか?と推測されている。


チャベスが目指す社会主義とは?
 米国のブッシュ大統領をあからさまに「悪魔」と呼ぶチャベス大統領は、「反グローバル化」運動との連携を強めてきたこともあり、新しい社会主義モデルを模索している。
 
 彼はまず、ラテンアメリカ域内では、米主導の米州自由貿易地域(FTAA)に対抗するための「米州ボリーバル主義代替政策(ALBA)」を提案した。このALBA戦略の枠内で、キューバとの連携による識字運動、石油共同開発を目指した「ペトロスル」の設立。欧米のフィルターによる巨大メディアに対抗する南米版CNNとも言うべきテレビ局「テレスル(Telesur)」の設立などが行なわれている。そして、南米一二ヶ国が参加する「南米諸国連合(旧名=共同体)」も発足。そして、ベネズエラはメルコスールにも正式加盟し、その影響力を強めている。2007年1月8日、チャベス大統領は、ベネズエラの21世紀の社会主義の確立に向けてより具体的な新政策を公表した。この中で注目されるのは、基幹産業の再国営化である。演説でチャベスは、「私達は今、新しい時代、2007年から2021年のシモン・ボリバル国家計画に、入った」この計画が向かうのは、「ボリバル主義的社会主義であり、革命的な特質を要する」とチャベスは述べた。

 さらに目を引くのは「ボリバル主義の大衆教育」の新たな運動として「新しい価値観を深め、個人主義、資本主義、利己主義という古い価値観を打破する」とチャベスは述べている。彼の目指すものが原理主義的社会主義革命だ、とするなら大きな闘争と犠牲が払われるのは避けられない。

 この様にチャベスの目指すボリバル革命を見ると、何となくルーゴ大統領のパラグアイ改革の一端が透けて見える。
 
 因に社会主義という概念を簡単に説明すると工場、農地等の「生産手段」を国が管理し計画経済を行うというのが社会主義で個人財産を認めない社会体制。旧ソ連、中国、北朝鮮などがそれに該当する。


階級闘争には外国人排斥運動も含まれる
 革命にはその相手とする敵が必要だ。そこで階級闘争が煽られる。その同系列に外国人も標的に上がる。
 
 この国のリーダーがチャベス大統領に深く共鳴しているとするなら我々移住者も、日本政府も覚悟を決めてその戦略を練らねばなるまい。2004年新年号の当欄にも警鐘を鳴らしたことだが、まず、日本人コロニアを死守しなければならない。

 それは、チャコ地方に入植したドイツ系メノニータたちが当地の先住民インディオたちに仕事を与えたり、学校や病院を作ったり、といった生活支援をしていく事でうまく共存している、というあの共存体制を周辺貧農グループとの関係で確立することだろう。 

 つまり、周辺パラグアイ人の生活をレベルアップし日系コロニアへの羨望、反感の牙を抜くことに当面、努力しなければならない。

 そのためにはJBICの海外経済協力部門を担い、世界最大規模の援助機関となった新JICAの手腕が問われることになる。左傾化が進む南米でこのパラグアイもルーゴ政権が昨年誕生した。トップリーダーがその進路をあいまいにしているものの当国も左傾化へと進路を切り始めたと思われる。今こそ新JICAは、その資力、ノウハウを日系コロニア防衛のためのプロジェクトに知恵を絞らねばならない。

 勿論、ODAプロジェクトはあくまでこの国の住民を豊かにレベルアップすることが肝要だ。そのためには日本語もスペイン語、グアラニー語も自在にしゃべれる二世たちを如何にこのプロジェクトに活用するかが重要だ。ただ、その場合もあくまでこれらのプロジェクトは地方政府や企画庁、農牧省など中央官庁に十分根回しして彼らサイドからの立案、と言う形にしなければならない。これまでの日系社会はこの手のやりかたが不得手だった。これからはパラグアイ政府との折衝要員、つまり、ロビー活動が出来る有能な二世三世を早急に育成する必要がある。

 遠慮深い日本政府はともすればガチンコ交渉を避け、日本近海の資源や領土問題にさえ腰を引いてきた。

 しかし、過去数十年にわたり当国に莫大な投資をしてきた日本政府及び日系移住者の基盤が脅かされるようなことがあれば、その損失は計り知れない。

                                       平成21年 元旦





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2008-06-09

休憩室ー2008年5月31日号




弊社駐車場に植えている桜の根元にコスモスを12本植えた。
その時、未だ蕾(つぼ)みだった黄色いバラも一輪、鉢に植えた。
翌日にも開くだろう、と思ったそのバラはこの2~3日の急激な寒波で
蕾みはしっかり閉じたままだ。

木枯らし吹き荒ぶパラグアイ冬景色の昨日、1冊の本が日本から届いた。
「逝く人・送る人 葬送を考える」(太田宏人・三一書房)。
きれいな表装の本だ。
著者は元ペルー新報の日本語編集長で今はフリーライターをしている。
昨年も彼から「知られざる日本人―南北大陸編―」(大倉出版)が届いた。

著者の太田氏は「国学院大学出で神官の資格を持っていながら
神主にならない変わった人ですね」とは、大学教授でありながら
宮城県内の多くの神社の神官職を務めているU教授。

僕もその本の19人の知られざる日本人の1人に名を連ねられたので、
昨年の訪日時、「オヤ、未だ現役の方でしたか?」と
すっかり故人扱いされたことに驚いた。何せその19人中、
生存者は僕を入れて2人だから仕方ない…。

今回届いた本のプロローグでは著者の父親が亡くなった事で
ビジネスライクな葬儀社との葛藤から始まる。

そして、代表曲「負けないで」というミリオンセラーのシンガーソングライター
坂井泉水(いずみ・ZARD)さんの青山葬祭場で催された“音楽葬”に
集う4万人余の姿に“弔いと癒しが同居する葬儀の原点”を観る。

彼女については何も知らなかったのだが、昨年NHKの音楽番組だったか、
彼女の特集が放映され(透明な歌声のきれいな人だな…)と、感心した記憶がある。

南米移住者に強い共感を抱く著者はパラグアイの移民発祥の地コルメナを訪れ、
同地の最後の“ボウサン”関勇寿(昨年末逝去)さんに会う。
一世から二世へ、いのちの葬送の揺れる切ない心情をさり気なく描く。

「千の風になって」の大ヒットに見る様に日本人のいのちに対する
心象風景は確実に変わってきた。





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2008-06-09

歴史は繰り返す勿れ




「時事斜断」

                                坂本邦雄

去る15日~16日、ペルーのリマ市でラテンアメリカ及びヨーロッパ共同体諸国の第5回首脳会議が開催され、吾が次期大統領フェルナンド・ルーゴ元司教は、ニカノル・ヅアルテ・フルトス大統領の誘いで、同じ専用機で連立って出掛けた。これ迄にも、ニカノルはルーゴを大統領府に招じ政権引継ぎの打ち合わせを行ったり、ブルビシャ・ローガ官邸では両者家族ぐるみの昼食会を開いたりで、大統領選中の犬猿の争いは何処へやら、お互いに至って和気藹々(わきあいあい)たるものである。そして、ペルーの会議では到着早々ニカノルそっち除けの人気で、初の華々しい国際デビューであった。

最近、あるラジオ聴取者が、何処の放送局とのインタービューで語った事かは一寸失念したが、今回、次期政権を勝ち取った野党連合「改革のための愛国同盟・APC」は、1946年の連立政府と同じ運命を辿るのではないかと  危惧していたのを聞いた。

その意味は次の様な次第である。つまり、幾年も前から居心地が良い大統領の椅子に固執する独裁者イヒニオ・モリニゴ将軍を支えて来たのは、アスンシオンの騎兵隊司令官ビクトリアノ・ベニテス・ベラ大佐、コンセプシオンの騎兵隊司令官エリベルト・フロレンティン大佐、航空隊司令官パブロ・スタグニ大佐と参謀総長ベルナルド・アランダ大佐の所謂「四人組」であった。この実力派グループは別名を「ナチス・ファッショ郎党」とも呼ばれ、実権の手綱を思う侭に操っていた。しかし、1946年6月9日早暁に、C-1及びC-2の両騎兵連隊が呼応して武装決起し、件の問題の「四人組」を駆逐した。この日の朝、パラグアイはお祭り衣装で夜明けを迎えた。市民は歓喜し、「英雄の霊廟」の広場に集まった。

警察隊も今や反対派が唱える新憲法発布、独裁者の辞任や全ての政治運動の自由などを求める声を聞く以外に何ら為す処を知らぬ有様であった。それ迄は青党リベラルや共産党は地下に潜るか又は国外に亡命するしか他に道はなかった。それに比べると、赤党コロラドと二月党は多少は恵まれた形勢にあった。

何時もの常套手段で、モリニゴ大統領は“腕相撲の勝者”に身を委ねた。そして、引き続き牛耳る軍部は 古くからのクレームである民主政体確立の民意に渋々と応じたのである。斯くして赤党コロラド、二月党及び軍部の三者連合で発足した“連立政権”は -実は直ぐに“衝突政権”に変じるのだが-、民主政府の人質としてイヒニオ・モリニゴ将軍を大統領府に据えて“走り出した”のである。そして、新政府の最高意思決定機関に依る施政方針が中々まとまらないにも拘らず、お人好しの国民は自由と希望の福祉国家の未来を夢見たのである。

処が、これまでにも数多くの不幸を招いた原因と同様の理由で又もや国民は幻滅を感じたのである。つまり、内閣や政府主要機関の人事問題を巡って早くも三者連立体制に深いヒビが入り、そして“雷鳴と雷光の共鳴箱”のフタが飛んだのである。要するに、門出して僅か6ヶ月後に連立内閣は崩壊し、その2ヶ月後の3月には例の1947年の大革命が勃発した。この約7ヶ月も続いた内乱は全国を喪で満たした。

但し、野党連合「改革のための愛国同盟・APC」の次期ルーゴ政権が、46年のモリニゴ連立政権の轍を必ずしも踏むとは思えない。今は60余年前の世相傾向や社会事情とは異なった時代である。「ルーゴ丸」を沈没させない主な責任は偏に多数派の青党リベラルにある。多様な野党連合の皆をルーゴが満足させるのは容易な事では なかろう。もし、青党が多数派の勢いに物を言わせて、新政府の魅力的な多くの要衝ポストを席捲すれば他の同盟党派の不満を招くであろう。近い中に国民は、新政府は信念を以って政府機構改造に目を付けていたのか、又は単に内閣の人事争い、或いはアブク銭の取合いに憂身をやつすに過ぎなかったのか、実際の正体を暴く事が出来るであろう。

我々は次期政権の賢明なる当局者の良識と愛国心に期待したい。万が一そうでなければ、嘗て1946年の “苦いデモクラシーの春”と同じ様な結末になるのを恐れる人達の心配は矢張り本当だったのかと、後悔はしたく無いものである。即ち、昔の連立政権の失敗の例を、改めて21世紀の今日、また繰返す愚を今更冒すのであれば、パラグアイは世界からどうにも救いの手が無い国だと云われても仕方はありますまい。





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tag : フェルナンド・ルーゴ 政治 パラグアイ 2008年5月31日号

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